ロイヤリティ5%は本当の収益じゃない|FC本部の『実質収益率』を加盟店PLから逆算する方法

※記事内で紹介している事例は、私たちが支援してきた実例や公開情報をもとに特定企業名を伏せて執筆しています。
「うちの本部、ロイヤリティ5%だから、加盟店からそれ以上は取ってないですよね?」──FC本部を立ち上げたばかりの経営者から、本当によくいただく質問です。気持ちはわかります。契約書にも「ロイヤリティは売上の5%」と明記している、それ以外は取っていないつもりでいる。
ただ、これが業界最大級の勘違いなんです。
既存記事「FCロイヤリティ相場」でも触れた通り、ロイヤリティ自体には売上歩合・定額・粗利連動など複数の方式があります。今回の記事はその一段奥、「ロイヤリティ%という表面数字を超えて、加盟店売上に対して本部・本部指定領域へ実際にいくら流れているのか」を、加盟店PLから逆算する手法で具体的に分解します。
本記事における「実質収益率」の定義
本記事でいう「実質収益率」とは、会計上の本部純利益率(営業利益率)ではなく、加盟店売上に対して、本部または本部指定領域へ流れる金額の合計比率を指します。広告分担金やシステム利用料、加盟金の月割など、本部にも対応コストがある項目を含めますが、本記事では「加盟店PLから見た負担構造」を可視化するための便宜的な指標として用います。本部の純利益率(本部継続コストを差し引いた最終マージン)については記事後半で別途扱います。
我々が蓄積したフランチャイズノウハウで見ても、長期で加盟店との関係が健全に続く本部と、5〜10年で集団離反・訴訟リスクを抱える本部の差は、ロイヤリティ%の高低ではありません。「実質収益率がいくらか」「その水準が加盟店の利益と両立しているか」の設計の精度にあります。
この記事では、ベンチャー・リンク出身のコンサルタント・山田文彦の監修のもと、本部側の経営者、加盟検討中のオーナー、加盟店との関係を再設計したい本部の三者に向けて、FC本部の収益構造を6つの源泉まで分解し、実質収益率の計算式と業態別レンジ、そして「本部側の実質粗利(営業余力)」までを構造的に解説します。
なぜ「ロイヤリティ相場」を見ても本部の収益は読めないのか
FC本部の収益と言われると、多くの方が真っ先に思い浮かべるのが「ロイヤリティ何%」という数字です。これは契約書の冒頭に書いてあるので、わかりやすい。加盟検討者も「ロイヤリティ5%か、10%か」で本部を比較しがちです。
ただ、これだけ見ていると本部の本当の収益構造はまったく見えません。理由は3つあります。
理由1: ロイヤリティだけが収益源ではない
本部が加盟店から得る収益は、契約書上のロイヤリティだけではありません。商品供給差益、広告分担金、システム利用料、違約金、出店時の一時金・仲介手数料……契約書のあちこちに散らばっている収益項目を合算すると、表ロイヤリティの3〜5倍の金額が本部に流れていることが珍しくないんです。
理由2: 業態によって「真の収益源」がまったく違う
ロイヤリティ%が同じでも、業態によって本部の実質収益はまるで違います。たとえば飲食FCの「ロイヤリティ3%」と物販FCの「ロイヤリティ3%」を並べて比較しても無意味で、前者は商品供給差益として加盟店売上の20%近くが本部に流れているケースがある一方、後者はロイヤリティ以外ほぼ発生していないケースもあります。
理由3: 加盟店との利益相反が「表に見えにくい数字」で起きる
公正取引委員会のフランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方(ガイドライン)でも繰り返し論点になっているのが、商品供給に関する拘束条件、価格決定権、加盟前の情報開示の問題です。これらの論点はすべて「表面のロイヤリティ%」では見えない領域で起きます。
令和2年9月の公正取引委員会のコンビニ実態調査も、ロイヤリティ%の議論ではなく、商品供給・廃棄会計・契約更新といった構造的な論点に踏み込んでいました。本部と加盟店の長期的な関係は、ロイヤリティ%の交渉では決まらないんです。
ベンチャー・リンク時代に本部構築を支援していた頃から、私たちは加盟検討者にこう伝えていました。「ロイヤリティ%だけを比較しても、本部の経営姿勢はわかりません。実質収益率まで分解できる本部を選んでください」と。今回の記事は、その実質収益率の出し方を、具体的な計算式まで踏み込んで解説します。

FC本部が加盟店1店から得る「6つの収益源泉」
加盟店売上に対して本部・本部指定領域へ流れる金額は、おおむね6つの源泉に分解できます。順番に見ていきましょう。
源泉① ロイヤリティ(売上 / 粗利 / 定額)
契約書の表側に最も大きく書かれる項目。方式は3つに分かれます。
- 売上歩合方式: 売上の3〜10%(飲食FCで多い)
- 粗利分配方式: 売上総利益の30〜70%(コンビニで多い)
- 定額方式: 月額10〜30万円(小型サービス業で多い)
コンビニのロイヤリティは粗利分配方式が一般的です。業界最大手のセブン-イレブンでは、土地・建物をオーナー側が用意するAタイプの場合、チャージは売上総利益の45%(24時間営業の場合43%)。一方、土地・建物を本部側が用意するCタイプでは、売上総利益の区分に応じてチャージ率が変動するスライドチャージ方式が採用されており、売上総利益の増加に応じて料率が上がっていく構造になっています(公開資料上、56%・66%・71%・76%などの段階値が示されています)。
ここだけ見ると「コンビニは本部側に流れる比率が高い」ように見えますが、これはあくまで売上総利益(粗利)に対するチャージ率です。加盟店売上に対する比率に換算するときは、店舗の粗利率を掛けて見る必要があります。
粗利分配方式は、中小本部が安易に真似してはいけない
コンビニのこの仕組みを見て「うちのチェーンも粗利連動にすれば儲かるのでは」と検討する新興本部の経営者がいますが、ここは強く釘を刺しておきます。粗利分配方式や、本文後段で触れる「廃棄会計」を正確に運用するためには、単品管理(SKU管理)とリアルタイムの廃棄登録ができる高度なPOS・基盤システムが必要不可欠です。これは数千万円〜数億円規模のシステム投資を前提にしないと回りません。
年商数億〜十数億規模の中小本部が安易に粗利連動を導入すると、加盟店との間で「何が原価で、何が粗利か」の定義や計算を巡って毎月泥沼の泥仕合になり、運用が破綻します。粗利分配方式は、SKU単位で会計を回しきれる大手だけの特権だと割り切ったほうが安全です。
源泉② 商品供給差益(本部の真の利益源)
ここが本記事の核心です。
本部が加盟店に商品・原材料を供給する際に、本部の仕入価格と加盟店への卸価格の差額が、表に出にくい形で本部の収益になります。これが商品供給差益です。
たとえば飲食FCで、本部がメーカーから食材を100円で仕入れ、加盟店に130円で卸す場合、1個あたり30円が本部収益となります。加盟店の月商600万円のうち、食材費が180万円(原価率30%)とすると、その180万円分の食材すべてに同じ差益が乗っていれば、月45万円前後が商品供給差益として本部に流れます。これは加盟店売上の7.5%相当。
業態によってこの比率は大きく変わります。
以下のレンジは、公開統計ではなく実務上の推定レンジです。加盟店PLや本部の収益設計を分解するときの目安としてお使いください。実際の水準は、本部の仕入構造・指定仕入比率・物流機能・支援内容によって大きく変わります。
- 飲食FC: 加盟店売上の8〜20%(食材・調味料・包材のすべてに差益)
- 物販FC: 加盟店売上の10〜25%(商品仕入そのものに差益)
- サービス系FC: 加盟店売上の2〜8%(消耗品中心、差益比率は低め)
ロイヤリティ3%の飲食FC本部で、商品供給差益として加盟店売上の15%相当が本部に流れているということは普通にあります。表ロイヤリティと実質的な負担構造は、まったく別物です。
なお、商品供給差益そのものは悪ではありません。本部が品質管理・物流・商品開発・購買交渉・規格統一・欠品対応などの機能を担っているなら、その対価として差益が発生するのは構造的に自然です。問題になるのは、差益の水準が不透明で、加盟店利益を圧迫し、かつ本部支援の内容と釣り合っていない場合です。
公正取引委員会のフランチャイズ・ガイドラインでも、商品・原材料・包装資材などの注文先を本部や特定業者に指定すること自体は、ブランドイメージや営業秘密の保護などに必要な範囲であれば直ちに問題とはされていません。一方で、必要な限度を超えて加盟者に不当に不利益を与える場合には、優越的地位の濫用・抱き合わせ販売・拘束条件付取引などに該当し得るとされています。本部の地位、拘束の程度、相手方の数・規模などを総合勘案して判断する論点で、「指定先以外からの仕入れを過度に禁止する」「市場相場と乖離した卸価格を強制する」などの行為は独占禁止法上問題になり得ます。
源泉③ 広告分担金(販促協力金)
本部が全国TVCM、デジタル広告、販促キャンペーンを行うための原資として、加盟店から徴収する協力金です。
- 売上の1〜3%が一般的
- 月商600万円の加盟店なら、月6〜18万円程度
広告分担金の性質に関する注記
広告分担金は、会計処理上「本部の本体収益」というより、販促原資としての預り金的な性質や特定目的の負担金として管理されるケースもあります。本記事では、加盟店PLから見たときの「本部・本部指定領域へ流れる負担」として便宜的に実質収益率に含めて扱います。本部側の信頼性を測る論点としては、広告分担金の使途を加盟店に開示しているか、運用状況の報告があるか、を確認するのが実務的です。
源泉④ システム利用料・ITフィー
POSレジ、本部システム、顧客アプリ、勤怠管理ツールなどの利用料。月額固定で取ることが多いです。
- 月額3〜10万円が一般的
- 加盟店売上の0.5〜1.5%相当
近年、システム投資の負担が本部側に重くのしかかっているため、ITフィーを別建てで徴収する本部が増えています。
源泉⑤ 違約金・特別ロイヤリティ
契約逸脱、売上未達、品質基準違反などに対する違約金。通常は発生しないことを前提にしていますが、実態としては年間で一定額の収益になります。
- 月平均で加盟店売上の0.1〜0.5%程度
- 中途解約時に大きく発生(契約残期間の予定ロイヤリティ相当など)
ここを意図的に大きく設定している本部は、加盟検討時に要注意です。中途解約のハードルを上げる目的の違約金は、長期的に加盟店との対立を生みます。
源泉⑥ 不動産仲介手数料・加盟時一時金
出店時に発生する一括収益です。
- 加盟金: 100〜500万円
- 保証金: 100〜300万円(多くは返還されるが、運用益が本部に残る)
- 開業前研修費: 30〜100万円
- 店舗設計・工事費のマージン: 工事費の10〜20%
- 不動産仲介手数料: 物件契約時に発生
これらは出店時の一時収益で、加盟店売上に対する継続的な比率では計算しにくいですが、新店ペースが速い本部にとっては継続的な収益源になります。
6源泉の合計が「実質収益」
以上の6つを合計したものが、本部が加盟店1店から得る実質収益です。
加盟店売上を100とすると、業態によって本部の実質収益は10〜30の範囲に分布します。表ロイヤリティが3%でも実質15%、表ロイヤリティが5%でも実質25%、というケースが普通にあるんです。

「実質収益率」の計算式 — 加盟店PLから逆算する手法
本部の実質収益率を計算するには、次の式を使います。
実質収益率 = (本部の総収益 ÷ 加盟店売上) × 100
本部の総収益 = ロイヤリティ
+ 商品供給差益
+ 広告分担金
+ システム利用料
+ 違約金(月割平均)
+ 加盟時一時金(月割平均)
加盟時一時金は契約期間(5〜10年)で按分して月割換算します。
実例: 月商600万円の飲食加盟店
仮定: 表ロイヤリティ3%、食材原価率30%(うち本部仕入比率8割)、商品供給差益マージン15%、広告分担金1%、システム利用料月6万円、加盟金300万円・契約期間5年。
| 項目 | 月額 | 加盟店売上比 |
|---|---|---|
| ロイヤリティ | 18万円 | 3.0% |
| 商品供給差益 | 21.6万円 | 3.6% |
| 広告分担金 | 6万円 | 1.0% |
| システム利用料 | 6万円 | 1.0% |
| 違約金(月割) | 1.2万円 | 0.2% |
| 加盟金(月割) | 5万円 | 0.8% |
| 本部総収益 | 57.8万円 | 9.6% |
表ロイヤリティ3%の本部であっても、実質では加盟店売上の9.6%が本部・本部指定領域へ流れている、ということが見えてきます。これでも飲食FCの中では比較的健全な水準で、商品供給差益マージンが20%を超える本部だと、実質収益率は12〜15%に上がります。
加盟店PLから逆算する3ステップ
すでに加盟している、または加盟を検討している立場で本部の実質収益率を逆算するなら、以下の手順で見てください。
- ステップ1: 加盟店の標準PLを5項目に分解 売上 / 原価 / 人件費 / 家賃 / 販管費 の5項目を月次で並べる。
- ステップ2: 各項目から本部・本部指定領域へ流れる金額を抽出
- 売上 → ロイヤリティ・広告分担金の対象
- 原価 → 本部仕入分の差益を推計
- 販管費 → システム利用料・違約金・本部研修費を確認
- ステップ3: 加盟店売上に対する実質収益率を算出 抽出した本部側流入額の合計を、加盟店売上で割る。これが本部の実質収益率です。
実務的には、商品供給差益マージンが本部から開示されないことが多いので、推計値(業態平均)で代用する必要があります。それでも、表ロイヤリティだけ見て比較するより、はるかに実態に近い数字が出ます。

業態別の実質収益率レンジ — 飲食 / 物販 / サービス
業態によって、実質収益率の構造はまったく違います。
飲食FC(実質12〜25%)
- 表ロイヤリティ: 3〜8%
- 商品供給差益: 加盟店売上の8〜20%(食材・調味料・包材)
- 広告分担金: 1〜3%
飲食FCは商品供給差益が大きいのが特徴です。本部が原材料商社的な機能を持ち、加盟店への食材卸で利益を取る構造。表ロイヤリティが低いほど、商品供給差益が大きい傾向にあります。「うちはロイヤリティ3%でお手軽です」という本部ほど、卸価格を見るとマージンが厚い、というのは業界あるあるです。
物販FC(実質10〜30%)
- 表ロイヤリティ: 0〜5%
- 商品供給差益: 加盟店売上の10〜25%
- 広告分担金: 1〜2%
物販FCは「ロイヤリティゼロ」を打ち出す本部も多いです。代わりに商品仕入そのものに利益を乗せるビジネスモデル。アパレル、雑貨、ドラッグストアなどに多いです。表面の魅力度(ロイヤリティゼロ)と実質の本部マージンの差が、業態の中で最も大きい領域です。
コンビニ・小型小売(粗利分配方式のため売上比とは別管理)
- 粗利分配方式(チャージ率): 売上総利益の40〜70%(業態・契約タイプにより変動)
- 商品供給差益: オリジナル商品中心の構造
- 廃棄会計の特殊性
コンビニは粗利分配方式という特殊な構造です。チャージは「加盟店売上」ではなく「売上総利益」に対してかかるため、他業態と同じ売上比のレンジで並べると数字が大きく見えすぎてしまいます。たとえば粗利率30%の店舗で売上総利益の60%がチャージなら、売上比に換算すれば18%相当です。コンビニ・小型小売を他業態と比較するときは、必ず加盟店の粗利率を掛け合わせて見る必要があります。
さらにコンビニ会計の特殊性として、廃棄分・万引き分を原価に含めずに粗利を計算するため、加盟店側の負担感が結果的に重くなる、という論点が国会でも何度も取り上げられてきました。これは業態の構造として知っておくべき重要なポイントです。
サービス系FC(実質8〜18%)
- 表ロイヤリティ: 5〜15%
- 商品供給差益: 加盟店売上の2〜8%(消耗品中心、商品供給比率が小さい)
- 広告分担金: 1〜3%
学習塾、清掃、リペアサービスなどのサービス系FCは、商品供給比率が低いため、ロイヤリティが本部収益の主軸になります。表ロイヤリティが高めに見えても、実質収益率は飲食・物販より低いのが特徴。
業態別の実質収益率レンジを並べると、「ロイヤリティ%の低い本部ほど、本部のビジネス構造が見えにくい」という構造が見えてきます。これは加盟検討者にとって最も重要な視点の一つです。
「実質15%超」と「実質5%以下」の本部 — 加盟店の離反リスクとの相関
ここから先は、本部側の経営者向けの論点です。
実質収益率が15%を大きく超える本部と、5%を下回る本部では、加盟店との長期的な関係性に明確な傾向の差が出ます。
実質収益率15%超の本部の典型パターン
加盟店利益が圧迫されやすく、長期的に以下のリスクが顕在化します。
- 集団離反: 契約更新時に複数の加盟店が一斉に離反する
- 訴訟リスク: 売上予測と実績の乖離、ノウハウ提供義務違反、契約更新拒否などを理由とした訴訟
- 新規加盟が止まる: 既存加盟店の不満が業界内で広まり、新規加盟が減少
- 業界レピュテーション低下: 「あの本部はキツい」という業界内評判が定着
実質収益率が高い本部すべてが悪い、というわけではありません。本部の支援機能(SV、商品開発、販促、IT)が手厚く、加盟店利益がしっかり出る構造になっていれば、実質20%でも健全に回ります。問題は、実質収益率が高いのに、本部支援機能が薄いケース。ここが、加盟店の不満が爆発するパターンです。
実質収益率5%以下の本部の典型パターン
逆に、実質収益率が低すぎる本部は、本部自身の体力が削られます。
- SV人件費の不足: 必要なSVを雇えず、加盟店支援が手薄になる
- 商品開発の停滞: 新商品開発の原資がなく、ブランドが陳腐化する
- 広告投資の不足: 全国広告が打てず、ブランド認知が伸びない
- 本部の経営不安定化: 黒字化に必要な加盟店数が増え、出店ペースに無理が出る
「加盟店ファースト」を掲げて実質収益率を抑える本部もありますが、これも長期で見ると加盟店にとってマイナスです。本部が支援できないFCチェーンは、結局個人店の集合体と同じで、加盟する意味が薄くなる。
「適正帯」は実質8〜15%
これまで本部構築を支援してきた経験から、長期的に本部と加盟店が共存できる実質収益率は、おおむね8〜15%だと考えています。
業態によって幅は変わりますが、
- 8〜12%: 本部支援機能を最低限維持、加盟店利益を厚く残す設計
- 12〜15%: 本部支援機能を手厚くする代わりに、加盟店利益も納得感のある水準
この帯から大きく外れる本部は、長期的にどこかで構造調整を求められます。

本部側が見落としがちな「逆方向のコスト」
実質収益率の議論で、本部側の経営者がもう一つ必ず見るべきなのが、「逆方向のコスト」、つまり加盟店から得た実質収益から差し引かれる、本部側の継続コストです。
本部の継続コスト4項目
- SV人件費: 加盟店20店あたり1名のSVを配置するなら、SV年収600〜800万円が必要
- 商品供給オペレーションコスト: 物流・倉庫・調達バイヤーの人件費とシステム
- 本部システム維持費: POS / 本部システム / 顧客アプリ / データ基盤の月次運用費
- 加盟店支援費: 研修プログラム、販促ツール提供、本部スタッフの加盟店訪問費用
これらは加盟店数に応じて変動する変動費的な性質を持ちます。加盟店100店規模の本部だと、月間で4,000〜8,000万円のコストになることも珍しくありません。
2026年のリアル:商品供給差益を消し飛ばす『物流クライシス』
飲食・物販FCで特に注意したいのが、商品供給オペレーションコストの中の物流費です。トラック運賃、ドライバー人件費、倉庫代、ガソリン代の上昇スピードが、商品供給差益の伸びをはるかに上回っているのが2026年現在の状況です。
見かけ上「加盟店売上の15%の商品供給差益を確保できている」ように見えても、小口配送の実費を緻密に計算していない新興本部は、差益の大半が物流会社への支払いに消えていきます。気付いたときには商品供給部門が実質赤字の金食い虫に化けていた、というケースが本当に多発しています。商品供給差益の見かけの厚みに油断せず、配送頻度・1便あたりの積載効率・配送ルート最適化まで含めた実コストで本部側の実質粗利を計算してください。
「本部側の実質粗利」を計算する
実質収益率20%、加盟店100店、平均月商500万円の飲食FC本部を想定すると:
- 本部の月間総収益: 500万円 × 20% × 100店 = 1億円
- 本部の月間継続コスト: 5,000万円(SV、物流、システム、支援)
- 本部側の実質粗利: 5,000万円(売上対比10%)
実質収益率20%でも、本部側の実質粗利は10%に半減します。さらに本部の経営者報酬、経理・人事・経営企画の本社機能、新店開発費を引くと、最終的に営業利益として残るのは加盟店総売上の3〜5%、という構造になります。
「本部側の実質粗利が薄い」と何が起きるか
ここが、本部経営の最重要論点です。
実質収益率を高く設定しないと本部経営が回らない構造になっている本部は、必ずどこかで加盟店利益を圧迫します。逆に、本部の継続コストを抑えすぎると、加盟店支援が薄くなる。
「実質収益率」と「本部継続コスト」の両方を構造的に最適化することが、長期で勝つ本部の必要条件です。ベンチャー・リンク時代の本部構築プロジェクトでも、本部の収益構造設計に半年以上かけたことが何度もあります。表ロイヤリティだけ決めて加盟店募集を開始すると、5年後に必ず構造調整を迫られます。
まとめ — 数字で対話できる本部だけが、長期で勝つ
- ロイヤリティ%は表面情報。本部の真の収益は6つの源泉を合算した実質収益率で見る
- 6つの源泉: ①ロイヤリティ ②商品供給差益 ③広告分担金 ④システム利用料 ⑤違約金 ⑥加盟時一時金
- 業態別レンジ(売上比、実務上の推定): 飲食12〜25% / 物販10〜30% / サービス8〜18%。コンビニ・小型小売は粗利分配方式のため、売上比ではなく粗利ベースで別管理
- 長期で本部と加盟店が共存できる適正帯は実質8〜15%
- 「実質収益率」だけでなく、本部の継続コストを差し引いた『本部側の実質粗利』まで設計するのが本部経営の核心
- 商品供給差益・拘束条件付取引・廃棄会計は公取委ガイドラインの論点。法務リスクを構造の中で常に意識する
正直、ここまでの収益構造を自社の数字で組み立て直すのは、Excelでやると本当に骨が折れます。6つの源泉と本部継続コストを業態別パラメータで動かして、実質収益率と本部真マージンを同時にシミュレーションする作業は、専門家でも消耗します。
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この記事の監修者
本ブログは、ベンチャー・リンク出身のフランチャイズコンサルタントである山田文彦・土田俊の知見をもとに、記事テーマごとに監修体制を組んで作成しています。

株式会社ディーノシステム
代表取締役
山田 文彦
元ベンチャー・リンク幹部。フランチャイズやライセンスビジネスのパッケージ構築から加盟店開発、経営指導まで、チェーン全体の経営サポートを牽引。飲食・サービス・物販など幅広い業態の多店舗展開を支援。

株式会社ディーノシステム
FCコンサルタント
土田 俊
元ベンチャー・リンク。現在も良きフランチャイズビジネスを探し求め、FC開発を全国で行う数少ないFC開発のプロフェッショナル。全国各地のマルチ・メガフランチャイジーとのネットワークを持つ。
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