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多ブランド展開はどう進める?|2業態目の判断・自社開発とFC加盟・シナジーと落とし穴

監修: 山田 文彦(元ベンチャー・リンク幹部)読了目安 約 9
多ブランド展開はどう進める?|2業態目の判断・自社開発とFC加盟・シナジーと落とし穴

※記事内で紹介している事例は、私たちが支援してきた実例や公開情報をもとに特定企業名を伏せて執筆しています。

1つの業態で店舗が軌道に乗ると、次に頭をよぎるのが「もう一つ、別の柱がほしい」という思いです。同じ業態を増やす多店舗化とは別に、異なる業態・ブランドを持つ「多ブランド展開(多角化)」という道があります。うまくいけば、収益の柱が増え、会社はぐっと強くなる。けれど、踏み込み方を間違えると、せっかくの本業まで揺らぎかねません。

この記事では、ベンチャー・リンク出身のコンサルタント・山田文彦の監修のもと、なぜ多ブランド展開するのか、自社で作るか他社のFCに乗るか、いつ踏み切るか、そして真価である「シナジー」と落とし穴まで整理します。直営拡大・自社FC化・他ブランド加盟|3つの道の違いと選び方で挙げた「第3の道」を、一段深く掘り下げる回です。

なぜ、多ブランド展開するのか

理由はシンプルで、収益の柱が1本だけの状態は、思った以上に危ういからです。

どんなに優れたビジネスモデルでも、消費者の好みの変化や、強い競合の出現で、いつかは勢いが鈍ります。かつて圧倒的に強かった業態が、ある出来事をきっかけに一気に客足を落とす、ということも珍しくありません。柱が1本なら、それが傾いた瞬間、会社全体が傾きます。

そこで効いてくるのが、ポートフォリオという考え方です。事業を「成長性(どれだけ儲かるか)」と「安定性(どれだけ長く続くか)」の2つの軸で見て、性格の違う事業を組み合わせて持つ。こうしておけば、一方が落ち込んでも、もう一方が支える。5年先、10年先も崩れにくい収益基盤と、次の成長の原動力を、同時に手に入れられます。

2つの道|自社で作るか、他社のFCに乗るか

多ブランド展開には、大きく2つのやり方があります。自社でゼロから新しい業態を開発するか、他社の優良なフランチャイズに加盟する(複数ブランドを持つ「メガフランチャイジー」になる)か。

「自社で開発する道」と「他社のFCに加盟する道」の2つの分かれ道を見比べている店舗オーナーのイラスト

自社で2業態目を開発他社のFCに加盟(メガフランチャイジー)
メリット既存のノウハウを活かせ、ロイヤリティもかからず、生んだ利益を自社で独占できる検証済みの成功ノウハウを使え、立ち上げが速く、成功確率が高い。最新の経営手法も吸収できる
デメリット業態開発からマニュアル整備まで膨大な時間とコストがかかり、成功確率は高くない加盟金やロイヤリティのコストがかかり、本部のルールに従う必要がある

一般に、まったくの新規事業を独力で立ち上げる場合は、商品開発・集客・オペレーション・人材育成のすべてを、自社でゼロから試行錯誤する必要があります。一方、確立されたFCに加盟する場合は、すでに検証された商品・マニュアル・研修・ブランドを使えるため、立ち上げ初期の試行錯誤を大きく減らせます。つまり、「新規事業の試行錯誤にかかる時間を、加盟金やロイヤリティというお金で買う」。これがメガフランチャイジーという選択の本質です。

いつ踏み切るか|「本業が順調なうち」に

多角化のアクセルを踏むべきタイミングは、はっきりしています。業績が悪くなってからではなく、本業が順調なうちです。

本業が落ち込んでから慌てて新しい事業に手を出しても、資金にも気持ちにも余裕がなく、たいてい失敗します。本業が盤石で、しっかり利益を出している。その「裏側」で、次の成長に向けた準備を静かに進めておく。これが正しい順番です。

具体的な目安としては、既存事業が社長の不在でも回り、店長やマネージャーが自分で数字を見て改善でき、採用・教育・QSC(品質・サービス・清潔さ)の型ができていること。ここが整わないうちに2業態目へ進むと、本業も新規事業も中途半端になります。前回の自社FC化の記事で触れた「社長というインフラ」に、本業がまだ依存していないか。ここを正直に見てください。

逆に言えば、まだ本業で「勝てる事業」を作りきれていないうちは、多角化に踏み込むべきではありません。1本目の柱が細いまま2本目に手を伸ばせば、共倒れになるだけです。

多ブランドの真価は「シナジー」にある

多ブランド展開のいちばんの恩恵は、単に売上が足し算で増えることではありません。事業どうしが支え合うシナジー(相乗効果)にこそ、本当の価値があります。

2つの異なる事業のあいだで、ノウハウや人材が行き来して支え合うシナジーをイメージする店舗オーナーのイラスト

  • ノウハウの逆輸入で、本業が強くなる。 たとえば他社のFCに加盟して学んだ「日々の数字の管理の仕方」「アルバイトを早く戦力にする教育の仕組み」「集客のやり方」を、自社の本業に持ち帰る。新しい事業が、本業を磨き直すきっかけになります。
  • 次の世代を育てる「場」になる。 新しいブランドの立ち上げを、社長の右腕や後継者に任せる。すると、その人にとっては「新規事業の責任者」として経営を疑似体験できる、またとない育成の場になります。
  • 人・物件・仕入れを、共通で使える。 既存の人材や物件、仕入れルートを2つの事業で活かせれば、コストの効率も上がります。ただし、ここには注意も要ります。安易に「既存スタッフを2つの業態で使い回す」のは危険です。働く側のマインドや、求められるスキルのギャップを無視してマルチタスクを強いると、現場のエンゲージメントは急速に冷め、エース級から順に辞めていく引き金になります。業態が違えば、必要な力も心構えも違うからです。なお海外には、1つの敷地に複数の業態を組み合わせて出店し、集客の相乗効果を高めた大手チェーンの例もあります。

どんな組み合わせならシナジーが効くのか、イメージしてみましょう。飲食の別ブランドどうしなら、採用・教育・仕入れ・物件開発が共通化しやすい。美容系の別ブランドどうしなら、顧客層やスタッフ教育、出店の立地感が近い。昼に強い業態と夜に強い業態を組み合わせれば、人材や物件を時間帯で上手に分け合えます。

逆に、ここで気をつけたいのが、シナジーのない多角化です。事業どうしのバランスを考えず、ただ「いま流行っているから」と次々に飛びつくと、いざ時代が変わったとき、すべての事業が同時に傾いて、会社全体が行き詰まります。「つながり」のない多角化は、強さではなく、もろさを増やすだけなのです。

落とし穴|大事なのは「数」より「魂」

多ブランド展開でつまずくとき、原因はだいたい次のどれかです。

本業が、おろそかになる。 新しい事業に気を取られ、経営資源(人もお金も社長の時間も)が分散し、足元の本業の管理が手薄になる。これがいちばん多い失敗です。

社内に、見えない対立が生まれる。 これは見落とされがちですが、社長が新事業に付きっきりになり、楽しそうに新規投資をする姿は、本業を泥くさく支えてきた古参の幹部から見れば、面白くないものです。「自分たちが稼いだ利益を、社長の新しい『おもちゃ』に注ぎ込まれている」という不満や嫉妬が社内にたまり、新旧の事業のあいだに、人材の引っ張り合いや、非協力の壁が生まれます。この感情のヒズミも、経営者はあらかじめケアしておく必要があります。

「魂」が入っていない。 会議室で練り上げた事業計画は、理論上は完璧かもしれません。でも、実際の現場でお客様を満足させ、泥くさく利益を出し続ける「執念」が欠けていると、その展開は早晩崩れます。机の上で広げた多ブランドが、現場で立ち行かなくなる例は、後を絶ちません。多ブランド展開の成否は、増やした「数」ではなく、一つひとつに注ぐ「魂」で決まります。ここでいう「魂」とは、単なる精神論ではありません。誰を責任者に置くのか、毎日どの数字を見るのか、社長がどこまで関与するのか、撤退の基準をどこに引くのか。こうしたことを決めきる覚悟のことです。

流行りに、飛びついてしまう。 前述のとおり、シナジーや事業のバランスを考えずに人気業態を追いかけると、ブームが去ったときに共倒れになります。

自社開発と他社FC加盟、どちらを選ぶか

最後に、2つの道のどちらを選ぶか。判断の軸は、自社がいま持っている経営資源(人・物・金・ノウハウ)です。

自社開発が向くのは、人・物・金を十分に用意でき、他社と差別化できる卓越した商品やサービス、独自の経営ノウハウを、ゼロから生み出せる開発力がある会社です。時間とコストはかかりますが、その分、利益も自社のものになります。

他社FC加盟(メガフランチャイジー)が向くのは、これといった新規事業のノウハウはないけれど、安全に、そして短期間で成長したい会社です。「試行錯誤の時間をお金で買いたい」「本業の営業力や人材育成に課題があり、加盟を通じてその仕組みを吸収したい」。そう考えるなら、FC加盟はとても合理的な選択になります。

ただし、ここに一つ、警告を。本業が潤っている会社ほど、資金力があるぶん、パッケージが未完成な新興FCの甘い営業トークの「カモ」にされやすいのも事実です。「これからはこの業態がブームです」と勢いよく近づいてくる本部ほど、自社の直営実績が浅かったり、中身が借り物だったりします。加盟する側こそ、その本部に本当に「標準化」と「再現性」があるのか、これまでの記事で見てきた目で、冷徹に見極めてください。営業マンの勢いに押されての加盟は、数千万円をドブに捨てることになりかねません。

まとめ

  • 多ブランド展開は、収益の柱を増やしてリスクを分散し、成長の原動力にする一手。本業が順調なうちに準備する
  • 道は2つ。自社開発(利益を独占できるが時間とリスク大)か、他社FC加盟(成功確率は高いがコストとルールあり)
  • 真価はシナジー。ノウハウの逆輸入・後継者育成・共通インフラ。逆に、つながりのない多角化はもろさを増やす
  • 落とし穴は、本業がおろそかになる・「魂」の欠如・流行りへの飛びつき
  • どちらを選ぶかは、自社の経営資源しだい

「2業態目を持つべきか」「自社で作るか、他社のFCに乗るか」。この判断は、最後はやはり数字での比較になります。それぞれの道で、収支はどうなるのか。本業と合わせて、会社全体としてどう成り立つのか。

店舗拡大計画AI「VentureGrow」は、まさに直営拡大・自社FC化・他ブランド加盟という3つのシナリオごとに、自社の情報や業態特性をもとにAIが前提条件を整理し、収支や投資回収の試算案を作成するツールです。多ブランド展開を考え始めたら、3つの道を自社の数字で並べて見比べてみてください。

なお、3つの道全体の違いと選び方は直営拡大・自社FC化・他ブランド加盟|3つの道の違いと選び方を、自社で2業態目を作ってフランチャイズ化まで視野に入れるなら自社をFC化するには?もあわせてどうぞ。

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この記事の監修者

本ブログは、ベンチャー・リンク出身のフランチャイズコンサルタントである山田文彦・土田俊の知見をもとに、記事テーマごとに監修体制を組んで作成しています。

山田 文彦 - 株式会社ディーノシステム 代表取締役 / 元ベンチャー・リンク

株式会社ディーノシステム

代表取締役

山田 文彦

元ベンチャー・リンク幹部。フランチャイズやライセンスビジネスのパッケージ構築から加盟店開発、経営指導まで、チェーン全体の経営サポートを牽引。飲食・サービス・物販など幅広い業態の多店舗展開を支援。

土田 俊 - 株式会社ディーノシステム FCコンサルタント / 元ベンチャー・リンク

株式会社ディーノシステム

FCコンサルタント

土田 俊

元ベンチャー・リンク。現在も良きフランチャイズビジネスを探し求め、FC開発を全国で行う数少ないFC開発のプロフェッショナル。全国各地のマルチ・メガフランチャイジーとのネットワークを持つ。

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